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どこにも行かず「つぶらら」を読む幸せ。
つぶらら 4 (4) (アクションコミックス)つぶらら 4 (4) (アクションコミックス)
(2008/10/11)
山名 沢湖

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 「人生最大の喜びだったよ」

 本年度初感想、かな。

 テレビという情報媒体の凋落についてはよくよく言われるとおりと僕も感じているのだけれど、でもやっぱり「テレビの向こう」っていうのは特別な世界だと思う。
 テレビに代わる媒体として出てきたインターネット。情報能力としてはインターネットの方が圧倒的に早く強いし(それが必ずしもプラスとは思わんけど)、「つぶらら」みたいなアイドルにだって、インターネット上のシステムを利用すれば誰だってなりうる。つまり誰でも「向こう側」に行ける場なのかなと思う。
 でも「テレビの向こう」っていうのは選ばれた人間にしか行けない世界で、多分空間的な問題以上に「僕ら」と「彼ら」は断絶してる。それを題材にする作品ってのはたくさんあって、たとえば「ホワイトアルバム」は、向こうとこちらに別れて断たれたたものと残ったものを描こうとしたのかもしれない。

 さて、「つぶらら」はどうだったかというと、上に書いたようなことを感じさせてくれるようで、やっぱり山名沢湖であるからふわふわしてて掴みどころがない。「テレビ」という装置は情報媒体なのではなくて、憧れを映し出す夢のような機械なのだな、といったことをちょっとだけ思って、アイドルというのは映し出される憧れで。もうちょっとまとめる。

 主人公つぶらは「キャラメル★エンジェル」という女性アイドルユニットの大ファンなのだが、「なぜファンなの?」という説明が一切されてない。これはさり気に女性ならではだと思う。「好きだから好き」なんて説明すら入らない。でもアイドルってそういうもんですよね。なんかよくわからんが好き。
 それとは趣きを異にする「ローカルアイドル」につぶらは色々あってなったりするんだけど、まぁそれはどうでもよくて、いや良くないよ。大事な話だよ。
 でも僕が感動したのはラストの「人生最大の喜びだったよ」の言葉。
 クラスのみんなで「キャラメル★エンジェル」のダンスの練習をしたり、テレビを買うために一念発起して新聞配達をはじめたり、ローカルアイドルになって「つららちゃん」と出会ったり、アイドル活動の一環として地元の高校めぐりをし、そこで野球部員と出会ったり、「キャラメル★エンジェル」と共演できたり、クラスのアイドルヲタと少しだけ心を通わせたり、その時間全てをひっくるめて「喜びだった」と言ってるのです。
 その「喜び」を作ったのは「キャラメル★エンジェル」というテレビの向こうの憧れで、オタクとしてその憧れを極めようとすることから生まれたものだと思うんですよ。つまりこの漫画はオタクの喜びを描いてるんじゃないかと思ったりするわけです。それは多分現代のオタクが失いつつあるものなのかなとも思う。
 そう思ってみると、オタク的情報収集に「インターネット」というツールはもはや欠かせないものなのに、つぶららには一切出てこないんですよね。「テレビ」への憧れを描いた作品だったのかもしれない。あるいは、「キャラメル★エンジェル」や「テレビ」を触媒として作られた他人と繋がる喜びだったのかもしれない。

 主人公はなにか努力しているわけでなく、ただ盲目的に「キャラメル★エンジェル」を楽しもうと行動してるだけなんだけど結果的にはうまく行く、という適当具合。でもやっぱり「好き」を突き詰めた結果なので、この漫画は「オタクとして真っ当に生きることから生まれた喜び」を山名沢湖の独特の、夢みたいなふわふわした不思議なタッチで描いた作品なのかなと思う。



 ああはい、あとで感想まとめます。
 
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